はじめに

東京大学医学部付属病院 准教授 野入英世

本研究テーマへの期待

内臓型リーシュマニア症は、別名をカラ・アザール(Kala Azar)といいます。
Kalaはベンガル語で「黒」を意味し、この病気を発症すると皮膚が黒くなってくることに由来しています。
また、Azarは長く続く「熱」を意味しており、黒熱病という意味になります。この疾患は180年以上前からインド亜大陸で知られ、その大流行に関する最初の記述は1824-25年にJessoreで発症したことが報告されており、この時7500名の死者が出たと記述されています。現在、地球上で年間50万人が新規発症し、その90%がインド亜大陸、およびスーダン、ブラジルの症例であるとされています。

この疾患は節足動物サシチョウバエの媒介による感染症で、世界中に広く分布しています。
特にインド、ネパール、バングラデシュにまたがる地域が高度浸淫地域として知られており、貧困で恵まれない暮らしの人々が感染の危険に晒されています。サシチョウバエは蚊に似ており、本疾患の治療が不完全な症例に発症する皮膚病変から吸血行動をとり、健常なヒトに再び吸血行動をとる際に病気を伝播することが分かっています。そのため、この地域での内臓型リーシュマニア症の制御には、臨床および環境衛生面からの複数国間の同時進行的アプローチが必要となります。その中で、バングラデシュは近年の政治的混乱の影響を受けて、最も対応が遅れています。
本研究では、バングラデシュの国際機関ICDDR,B及び政府と協力して、主に下記の3つの点について本疾患撲滅に向けた研究を展開します。

本研究テーマへの期待

これらを通して、地球規模での感染症対策に資する科学的根拠を提示し、さらに国内外の研究者の育成につとめ、バングラデシュにおいて持続可能な感染制御技術を構築・確立することで、日本の協力によるアジア貧困層の疾患コントロールのmile stoneとしたいと考えています。

本研究テーマへの期待