研究テーマ

松本 芳嗣

伊藤 誠

愛知医科大学 教授 松本 芳嗣

この研究の真の意義

カラ・アザール(内臓リーシュマニア症)は、サシチョウバエという蚊よりさらに小さな吸血昆虫が媒介する原虫が引き起こす、治療しないとほぼ死亡する感染症です。この感染症対策に不可欠なのが、流行地で多少の訓練を受けた人が使える、安くて、しかも高性能な診断キットです。これまでに2つの診断法を開発しました。一つは尿中に出てくる、この原虫に対する抗体を高感度に検出する方法です。血液を使わないので、検体の採取が容易です。多検体の検査に向いていて、大規模な疫学調査に使えますが、治療後もしばらくは陽性となるので、必ずしも今現在の感染を示すことができません。もう一つは、迅速遺伝子診断法であるLAMP法です。この方法はこれまでのPCRによる遺伝子増幅法とは異なり、より簡単な機器で高感度に原虫のDNAを検出でき、結果が肉眼で観察できます。この方法で陽性になれば感染していることがわかります。この二つの方法を組み合わせて、カラ・アザールをなくしていこうというのが、我々のグループの大きな目標です。

バングラデシュではヒトのみがこの原虫を持ち、サシチョウバエによってヒトからヒトへ伝搬されると考えられています。カラ・アザールの治療後に発症するPKDLの患者が原虫キャリアになっていると考えられていましたが、それ以外にも全く無症状のキャリアの存在がわかってきました。カラ・アザール対策にはこれらのキャリアの発見が重要ですが、無症状のキャリアを発見するのは容易ではありません。尿を使った検査法で大規模なスクリーニングをして、抗体陽性者つまり原虫キャリアの可能性の高いグループを見つけ出し、LAMP法で検査することにより確定するという2段階の方法を、流行地で簡単に使えるような方法に改良していくことがこれからの研究課題です。